外壁タイルの剥落原因については過去に何度か解説しましたが、多くの不具合を検証しているうちに、確証と考えられる原因がぼんやりと見えてきました。多くの建築関係者が購読する専門誌「日経アーキテクチュア」2014年7月25日号の特集は「落ちない外壁タイル」でしたが、新しい工法の解説がいくつか紹介されていましたが、肝心の剥離原因に関しては、これまでの解説と大差はなく、広範囲の原因が考えられるというところで留まっておりました。構造スリット等の目地ズレや日射によるタイル面の膨張等の要因はこれまでも語られてきた要因で、取り立てて新しい原因ではありません。もちろん、これらの要因が外壁タイルの剥離に大きく影響するのは事実ですが、施工不良かどうかの境目があいまいになり、瑕疵の話が持ち上がっても、決定的な要因として施工不良を特定することが難しいのです。
2年前に実施した外壁タイル剥離の顕著な改修工事で明らかになった実態と今年になって調査した外壁タイル剥離の顕著な建物の調査から、核心部分がハッキリしてきました。
■犯人 その1
構造躯体を打設する際の型枠として塗装型枠「パネコート」を使用しているケースで
かつ、外壁タイルを直張りするケースで多くの不具合が発生している。
■犯人 その2
外壁タイルの下地として、コンクリート面の目粗し等の下地調整を適正に実施していない
ケースで多くの不具合が発生している
■日射による熱膨張は犯人ではない?
日射によって生じた外壁タイル面の熱膨張は当然剥離要素の一つではありますが
全ての建物に対して等しく当たる日射を受ける建物で不具合の少ない例も沢山あるため
日射を外壁タイル剥離の原因としてしまうのは軽率で、主原因からは除外すべきと考えます。
外壁タイル剥離現象の顕著な建物2例で共通する点は、日射が当たらない北面でも多くの
剥離現象が確認されたことです。つまり、日射が全く当たらなくても、剥離現象が多く発生
していたことになります。
以上の内容を整理すると、外壁タイルの剥離原因はコンクリート躯体表面の目粗し等の下地調整が適正に実施されなかった場合と特定できると考えます。
2012年改定の建築工事標準仕様書・同解説JASS19 陶磁器質タイル張り工事(日本建築学会)にもコンクリート躯体に外壁タイルを直張りする場合はシッカリ目粗し等の下地調整をするように書かれていますので、適正な下地工事がなされていない場合は施工不良と言えます。