丸の内の東京海上ビル(前川國男設計)の建て替え計画が発表され、前川事務所の元スタッフを中心に東京海上ビルの存続を願う会が発足され、「えっ!ホントに壊す!?東京海上ビルディング」という本が出版され、3頁程寄稿させていただいたが、改修を施せばまだ十分に利用可能な名建築を再開発目的で半世紀も経たないうちに解体するのは問題であると提唱するものの、私企業である東京海上日動保険会社が、その要望を聞き入れることもなく、この秋に解体が予定されている。
世界的な潮流として、一流企業はみなSDGsを表明しているものの、その実態と言えば、SDGsの根本理念とは真逆の行動を取っている。お濠端の美観論争などもかつて国会でも論議になったが、いまや昔の話。丸の内ではやりたい放題の再開発が行われている。
先日、衆議院議員会館にて「脱炭素につながる再開発とは」というシンポジウムが開かれ、基調講演を行った宇都宮大学の横尾教授の説明によれば、東京海上ビルを改修工事を行って使い続ける場合と現在の建物を解体して再開発を実施する場合のCO2の排出量は約4倍の差が生じるとのことであった。
現在の新型コロナ感染症蔓延の影響で事務所の在り方自体が変わりつつある時に、過去の流れのままに再開発を行い続けることには大きな疑問があると言わざるを得ない。
マンションの場合は建て替え自体が難しい課題であるため、より一層、施設維持の方法を大切に考えてゆく必要があります。