大規模修繕工事はザックリした気持ちでおおらかに!

大規模修繕工事の時期が迫り、たまたま理事会のメンバーとして判断に関わらなければならない立場に立たされると、誰もがシッカリとした仕事をして責任を果たさなけばならないと律儀に考えがちですが、ここに落とし穴があります。

新築設計に関わって40年、マンションの改修に関わって15年の経験から解説すると、マンションの大規模修繕工事の内容はあらかたがエステのような工事内容です。管理組合の責任が問われる内容があるとすれば、外壁タイル等が剥離落下して居住者あるいは第三者に怪我をさせるケースくらいですが、外壁タイルが剥離落下する事故の報告は頻繁に聞きますが、外壁タイルで怪我をした人の話題はあまり聞きません。つまり、外壁タイルの剥離落下が引き起こす人身事故はかなり少ないということかと思いますが、人身事故は起こしてはいけない事故なので、定期点検と適切な磁器の修繕は必要です。

ここで一つポイントがあります。大規模修繕工事の適切な実施時期はどうなんでしょうか。
漠然とした周期イメージとして、10年という考え方がありますが、建築の専門家の立場で言えば、10年という修繕周期は少し早すぎると考えています。建物の状況が良ければ、20年程度は十分に良い保存状態を保てると考えています。ただ、建物によって、出来具合にバラツキがあるので、竣工後10年で修繕工事を施さなければならない状態の建物も結構あります。そのため、国は建築基準法で10年毎の外壁の全面点検を義務付けています。

ここで注意したいのは、国が義務付けているのは10年毎の大規模修繕工事ではなく、10年毎の外壁の全面点検なのです。これを消費者の立場で考え直してみれば、管理組合としての法令順守は大切にしなければなりませんので、外壁の全面点検は法令通りに実施するとして、その他の工事項目はどうなんだろうと精査していくと、多くの大規模修繕工事には私から見れば無駄な工事が沢山盛り込まれています。それは工事会社の営業活動として考えれば当然の事かもしれませんが、賢い消費者の目線で考えると、やらなくても何ら問題のない工事が30~40%程度近く存在します。誰もがやらなければならないと考えがちな屋上防水更新工事やシーリング工事等が当てはまりますが、専門業者の十分とは言えない説明により、当然の事として更新工事に同意してしまっています。更新工事が間違っている訳ではないのですが、費用対効果の面から考えれば無駄な工事と言われても仕方のない工事項目なのです。

また別の要素として工事業者の選定方法が不適切なケースも多く見受けられ、適切な入札方法を取り入れて決定した工事と業者任せのやり方で進めた工事とでは1.5倍~2倍程度の差が出るケースが多く見られました。面倒だからと管理会社に任せてしまう場合に、その悪い例が当てはまる傾向にあります。

話を大規模修繕工事の捉え方に戻せば、目の前の細かい不具合(細かいひび割れ等)に気を取られずに、大規模修繕工事の本来の目的を理解する事が大切です。人間で言えば、中高年になれば、肌の老化も進み、青少年のような容姿は保てませんが、全ての人が不健康な訳ではなく、小皺は増えても健康な人は沢山います。建物に話を戻せば、建物それぞれの個性に従い、悪くなった部分の修繕を行っていけば何の問題もありません。本来、建物とは大きな修繕を施さなくても50~60年程度は十分にもつように考えられて設計されていますので、ちょっと風邪をひいたからといって、慌てて病院に入院させるような工事はする必要がないのです。
不動産価値が下がらない程度のメンテナンスを施していけば十分であると理解していれば十分です。

細かい事に囚われずにおおらかな気持ちで大規模修繕工事を考えていくことがポイントです。

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