近年、広範囲に外壁タイルが剥落するケースが増えてきたように感じています。外壁タイルの剥落原因は色々考えられるのですが、最近の事故のほとんどが、コンクリート下地の問題であると考えられます。古い建物の場合は躯体コンクリート打設後にコンクリート表面に左官工事のモルタルを塗り、その上にタイルを貼りましたが、近年はコスト削減効果も期待し、コンクリート躯体面に直に外壁タイルを貼るケースがほとんどになっていると思われます。最近の外壁タイル剥落事故は、この直貼り工法で多発しています。
なぜ直貼りの場合に剥落事故が多いかといえば、表面がツルツル状態になっている事が多いためですが、コンクリートの表面がツルツルになる理由は最近の型枠材料にあります。最近はパネコートという表面が塗装された型枠材を使うことが多く、コンクリ―トの表面がツルツルに仕上がります。これはコンクリート型枠の脱型には便利ですが、タイル貼りの観点からすれば、ツルツルのコンクリート表面にタイルを接着する場合は剥がれやすいという弱点があるのです。そのため、日本建築学会の建築工事標準仕様書(JASS)にも注意事項が記載されています。
1991年版の建築工事標準仕様書「陶磁器質タイル張り工事」の「コンクリート打放ち下地・その下地」の項目では以下のように書かれています。
ⅰ) コンクリート打放し下地にタイルを直接張りつける場合にはコンクリート面の精度がタイルの仕上りに直に影響してくる。コンクリートの打ち放し下地でも、実際には薄塗りの下地補修を実施しているケースが多い。この場合下地補修材の選定不良、施工上の管理等を怠ると、後日剥離の原因となるので特に注意を要する点である。
ⅱ) 一般には、型枠の脱型を容易にするため型枠剥離剤が用いられている。油脂系の剥離剤を用いた場合は、コンクリート面に剥離剤が残り接着不良を生ずる事があるので、タイルの張り付け前に下地コンクリート面のケレン清掃と混和剤の使用を検討する必要がある。
ところが、2012年に改定された仕様書では以下のように改変されていますが、これは多発する剥落事故を受けての改定内容と思います。改定された内容は以下の通りです。
a.最近、地球環境問題や廃棄物問題への対応として、合板型枠の転用回数を増やす目的で、塗装合板が使用されることが多くなっている。型枠脱型後のコンクリート表面は平滑で、張り付けモルタルの付着が悪く引張接着強度が得られにくいため、コンクリート界面からの剥脱原因の一因に挙げられている。また、(中略)そこで、コンクリート面にタイル張りを行う場合には、清掃または目粗しを必須とし。。。
まとめると、下地調整が適切に実施されていない場合に、剥落事故につながる不具合が多発するという事が言えます。