原発事故とマンション瑕疵に共通するもの

福島原発事故から見えてくる問題点は分譲マンションの瑕疵の原因と共通するものがあります。瑕疵には大きく分けて2種類あります。一つは施工瑕疵であり、もう一つが設計瑕疵。世間一般では施工不良が多く語られますが、そこにも理由があり、施工不良はわかりやすいが設計瑕疵は専門家以外にはわかりにくいという一面があるのです。

建築のコンサルタントとして多くの瑕疵物件を調査してきた経験から言えば、実は施工不良よりも設計瑕疵の方がはるかに多いのが現実です。もちろん設計瑕疵と言っても、悪意で不良建築を設計する者はいません。簡単に言えば、設計者が多くのことを想定せず安易に設計している場合に瑕疵が発生するケースが多いのです。

福島原発事故の報道では東電関係者及びお役人の口から「想定外」という言葉を何度聞いたことか。純粋に民間での事業の場合は採算性の問題が絡むので、ある程度の想定は仕方ないとして、原発のような国民の生命を脅かす可能性を秘めたケースでは使用してはならない言葉と思います。

何年か前に世間を騒がせた姉歯事件は一般人の中でもまだ鮮烈に記憶している人は多いと思います。彼がした行為は詐欺行為であり犯罪ですが、あの姉歯元建築士が設計した建物でもインチキ設計とは別に現場ではそれなりの施工がされるので、世に現存する古い建物よりは安全であるという一面もあります。多分の話ではありますが、今回発生した震度6程度の地震では倒壊しなかったと推測します。

話を原発事故に戻して考えてみるとマンションの瑕疵とどこが共通するかと言えば、「想定の甘さ」なのです。福島原発に関して言えば、原子炉の生命線と思われる冷却施設を津波の影響を受けやすい海際に安易に設置していたこと。これはシステム設計上の設計ミスと思います。世界をみれば今回の地震に近い記録がある訳だから、想定外と語るのは安易としか言いようがありません。原子炉そのものは大丈夫であっても付属施設が破壊されれば機能は止まります。

建物も同じなのです。基本的な考え方は問題なくてもマンションのように規模の大きな建物では場所によっては本来の機能を果たせない箇所が出てくるのです。現場経験の少ない設計者は断片的な発想はできても、その断片が全体で連続した際にウィークポイントが必ずあることを知らない設計者が多くいます。断片的に考えている時は建材が連続している前提で考えていますが、建材には持ち運びできる長さがあり、必ずどこかで切れ目が発生するのです。その切れ目が多くの場合で瑕疵につながります。優秀な設計者はそのウィークポイントを想定して設計しますが、そうでない設計者はそのウィークポイントのことは想定外なのです。

今回は原発事故を例にとってマンションの瑕疵について考えてみましたが、大規模修繕工事を計画する際も同じです。安易な姿勢で大規模修繕工事を行うと本来の目的以外のところに無用な資金を投入することになりかねません。何をどう直すのかを自分達の頭でシッカリ吟味する必要があります。

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