シンドラーエレベーターに関わる問題

エレベーターの死亡事故はショッキングな事件でしたが、マンションに住む立場で考えると、エレベーター業界そのものがいろいろな問題を抱えている業界なのです。

今回の事故は、かなりの部分がメーカーに問題があると考えられますが、エレベーター業界自体が、これまで、かなり独占的に利益をむさぼってきたとも言えるのです。それに絡んで保守管理会社の問題がいろいろと取りざたされてきました。

まず、今回の事件に関して言えば、シンドラーエレベーター側にかなり問題があります。製品そのものが信頼に足りるものかどうかの疑問が多い点です。制御関係、ブレーキ関係など、未だ真相がわかりませんが、現実的には考えにくい現象が発生しています。扉が開いている時は、エレベーターは動いてはいけないといった指示事項を守るようにするのが制御関係の装置ですが、制御が働いていない。しかし、ブレーキといった機械的な面でも疑問は残ります。エレベーターのかごを動かすためにモーターが作動しなくても、ロープの先にぶら下がっているカウンターウェイトが、かごの総加重の5割増し程度の重さになっていますので、ブレーキが外れれば、かごは動いてしまいます。

実際は何が悪かったのか、詳しい報告を待たないとわかりませんが、尊い命が失われたことは大きな問題です。

もう一つの問題は官庁関係の入札制度にもあると思います。世界第二位のシェアを誇るシンドラーといえども、日本では、ほとんど実績がありませんでした。その現実に割って入るには、入札制度を実施している官庁関係の仕事で安く値入することが、手っ取り早い近道になります。安い値で仕事を請けるためにはイニシャルコストを下げる必要があります。ここに、姉歯事件と似たような現象が見えてきます。

入札を実施する側が製品の内容を熟知していれば、事前にいろいろ調べることになりますが、会社の規模や仕様だけで判断すると、ある種の詐欺的行為を見抜けないことになります。
さらなる問題は、エレベーター業界そのものの体質です。我々設計者がエレベーターの見積を取りますと正に、半値八掛け。定価といわれるコストの半分くらいで実際の売買が行われます。半値で売って儲かるのかというと、当然儲かるわけが無いのですが、そこについて廻るのが保守管理です。ひらたく言えば、安く売って、管理で元を取るスタイルです。パソコンのプリンターに似た世界かと思います。

プリンターそのものはかなり安くてもインクカートリッジはかなり高いと感じられます。実際に高いと思いますが。

今回問題になっている管理会社のSECは、いわゆるメーカー系の会社でなく、独立系と言われる会社です。メーカー系の保守管理会社の半分程度の金額で管理を引き受けることになりますが、どちらにも問題があるといえます。片や儲けすぎ。片や管理内容の質に不安を残す。その業界の人の話では、実は今回のような事件をメーカー側は待っていたと言う人もいます。独立系の管理会社に美味しいところを持っていかれ、挽回する機会を待っていたというのです。確かにありそうな話ではありますが、奥の深い事情が背景にある今回の事件であると思います。

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