外壁タイルの剥離は地震のせいではない!

近年、45二丁タイルと呼ばれる小型タイルの剥離落下事故が増えている。もちろん、以前から使われている二丁掛タイルや小口タイルの剥離落下事故が無いわけでもないが、恐らくは剥離原因が異なる。45二丁タイルは目地を入れて5㎝×10㎝のサイズの厚さ6~7㎜程度の小さなタイルです。マンションでは多く使われているタイルですが、施工が簡単!単価も安い!で販売者側にとっては好都合な材料です。そのせいか、最近この45二丁タイルの浮き・剥離トラブルが多発しています。

第1回目の大規模修繕工事を迎え、外壁の劣化調査が入った時点で運命が別れます。普通に出来ていれば、外壁タイルの必要貼り替え枚数は全体面積のせいぜい1%程度です。ただし、ここで言う必要貼り替え枚数と浮き枚数は同じではありません。劣化調査の結果、タイル浮きの枚数は1%以上になる可能性もありますが、浮いているタイルを全て張り替える必要はありません。逆に貼り替えしない方が良いケースもありますので、浮いた枚数と貼り換える必要のある枚数は別に考える必要がありますが、工事代金を多目にしたい業者や管理会社にあうと、余分な工事をやらされる羽目になることもあります。

最近関わった事例では対照的な工事となりました。立地・規模等の似た2つのマンションで全く異なった結果が出たのです。方やタイル浮き枚数が全体面積の10%近く(通常の10倍程度)で、他方は浮きがほとんど無しという状況。ただし、この状況の頗る良かったマンションは外壁タイルは二丁掛タイルでしたので、条件が全く同一といは言えないのですが、階数が10階を超える建物であるにも関わらず、東日本大震災の影響は全く関係なしという状況だったのです。

それでは、その差は何か?

簡単に言えば、新築時の施工内容の違いなのです。剥離落下事故が発生するような建物では、タイルを剥がしてみると、ほとんどのケースでコンクリート躯体の下地処理が不適切なのがわかります。不適切というよりも、何も処理せずにタイルを貼っているという状態です。タイルの下から、綺麗でツルツルのコンクリート面が現れるのです。昔は外壁タイルを貼る際はコンクリート面にモルタル塗でタイル貼り下地を作ってからタイルを貼りましたが、施工方法の進歩(?)とコスト削減を考え、最近はコンクリート面に直接タイルを貼る工法に変わってきました。直接貼る事により、モルタル塗の工程を一つ減らす事が可能になったからですが、ここに一つ落し穴があります。コンクリート躯体面の精度を上げる事と型枠の撤去を容易くするために、最近はパネコートという塗装型枠が使われ、再利用する際には剥離剤を使用するように材料メーカーからは指示されています。そのためか、コンクリートの表面が鏡のようにツルツルに仕上がっているのがわかります。タイルの接着モルタルがしっかりコンクリート面に食いついていれば、このツルツルコンクリ―ト面を見る事はないのでしょうが、大きく浮いたタイル面を剥離してみると、この綺麗なコンクリート面が現れるのです。

2012年に改定した建築学会の標準仕様書にはコンクリート下地の処理方法が詳しく書かれていますが、それ以前に施工された建物では注文主から工事費・工期等で厳しい状況に置かれた施工業者の施工内容が不十分な可能性は十分に考えられます。

外壁タイルの貼り替えは1㎡の大きさで10万円以上の工事費が発生しますので、貼り替え枚数が2万枚になれば、貼り替えだけで1000万円以上の補修費が発生します。必要貼り替え枚数が全体枚数の3%を超えるような数値の場合には、元々の施工に問題があったと考えた方が良いでしょう。

考えの浅い販売会社等は3%程度の貼り替え枚数が普通と嘯く者もおりますが、不具合の比率と貼り替えを必要とする不具合枚数は別の話ですので、騙されないようにしたいものです。
外壁タイルの剥離原因は地震のせいではない! 決して!!

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