外壁の全面打診調査

平成20年4月に建築基準法関連の建物の定期報告の内容が変った。これまで、サンプリングの打診調査でOKだった報告内容が修正され、全面打診調査が義務付けられることとなった。内容を整理すると以下のようになる。

①手の届く範囲を打診、その他を目視で調査し、異常があれば全面打診等により調査 (従来通り)
②加えて竣工、外壁改修等から10年を経てから最初の調査の際に全面打診等により調査 (新規)

その他、設備等についても改正されていますが、ここでは割愛。

新しい改正内容を短絡的に読めば、10年毎に全面打診調査が必用となってしまう。

ここで心配することは、この内容が良心的でない管理会社や施工会社によって悪用されてしまい、10年毎に大規模修繕工事が必用と拡大解釈されかねないことです。私のような建築のプロは法律を作成している国土交通省のお役人の方が何を考え、こういった法律を作成したか、すぐに理解できるのですが、一般の方には難解な内容であるため、修繕工事を進めたい業者レベルの人達に悪用されやすいということです。

姉歯事件以降、行政側への批判も増加したため、お役人の方々が保身のために作成した法律と私は理解しています。

施設を適切に保全管理していくことは当然大切なことではありますが、管理組合によっては財政的に苦労をしているところも多い筈ですが、そのことよりも管理者側への責任転嫁に重きを置いた政策は消費者の敵と思います。

私のような建築のプロは、工事費を抑えた調査方法も工夫できますが、一般の方にはかなりハードルが高く、施工サイドより仕事がしやすく安全的にも優位な工事方法を提示されると、それに対抗するのはたやすいことではありません。結局、10年毎の大規模修繕工事という行き過ぎの方向になりがちになると予測しています。

今回の改正では、「全面打診調査必要」と言っている訳で大規模修繕工事を義務付けた訳ではありません。つまり、最低限「調査」をすればいいわけです。規模にもよりますが、調査だけでしたら100万円前後でも可能な世界になってきます。

また、この法律の運用は各地方自治体に任されていますので、現実の問題として京都ではまだ採用していません。また仮に法律通りに実施できなくても、罰則規定の適用までは困難と思われますので、慌てず対処する必要があります。

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