震度7の地震といえども

耐震補強工事をするかどうかの相談を受けた。1981年の建築基準法改正前に設計された建物のほとんどは現在の設計基準で計算し直すとNGになる確率が高い。しかし建築基準法上の数値と建物の安全性は同じものとは言えないと私は考えます。数値が良いにこしたことはありませんが、建築基準法の考え方自体、大きな地震でも何の被害を受けない基準ではありません。基本的な考え方は大きな地震がきても安全に避難できる強度を確保するのが基本的な考え方です。

阪神淡路大震災では新耐震基準に適合する建物でも大きな被害を蒙った建物が皆無ではありません。それでは東日本大震災ではどうかというと地震そのもので大破した建物はゼロに近い報告となっています。つまり同じ震度7の大地震でも阪神淡路大震災と東日本大震災では大きな違いがあります。阪神淡路大震災の特徴は震度7の地域が線状に発生しており、地震発生メカニズムは活断層のズレが原因です。東日本大震災の場合は地球の深い処でのプレートの潜り込みの大きなずれが原因となっています。そのため同じ震度7の地震とはいえ、阪神淡路大震災と東日本大震災では大きな違いがあるのです。

現在確認されている活断層の上部にある建物は注意が必要ですが、そうでない場合は新耐震基準に適合していなくても設計内容や構造規模によっては安全性に大きな差がないこともありえるので、単純に数値だけで判断するのは軽率という考え方もあるのです。もちろん数値が良いにこしたことはないのですが、耐震補強工事には、少なくない費用が必要となりますので、分譲マンションの場合は住民全体の合意形成が大きな問題となります。

耐震補強工事の大きな目的は「建物が被災した場合でも安全に避難できる強度を確保すること」ですので、新耐震基準に適合していなくても、建築基準法の目的は確保できる可能性があることを認識しておく必要があります。また新耐震基準に適合していても、大きな地震で被害が出ない訳ではないことも認識しておく必要があります。

マンションの場合は住戸間の界壁に耐震壁が配置されていることが多いので、建物のプロポーションやバランスが適切であれば、新耐震基準に適合していない建物でも安全性はある程度確保されているケースが多いと私は考えています。注意すべき点は建物の崩壊を引き起こす可能性のある弱点がないかどうかを確認することです。1階部分が駐車場になっていて1本の柱に大きな力が集中するつくりになっているケースや同一平面内で強度のバランスが悪くねじれが生じる可能性の高い建物の場合は改善した方が良いでしょう。

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