プレキャスト・コンクリートとは、工場で製作されたコンクリート部材のことを言いますが、最近はマンションの中に使用されるケースも増えてきました。どこに多く使われているかというと、外廊下やバルコニー等が中心となっています。プレキャストコンクリート使用の最大のメリットは、外壁タイル等の不具合の少なさにあります。工場で製作されるプレキャストコンクリートは品質の良さもさることながら、タイルがコンクリートに直接打ち込まれるため、接着不良によるタイルの浮きや落下の心配はほとんどありません。
不具合のうち、かなり多くのものが外廊下やバルコニー部分に集中しています。そのため、クレームを減らす目的で外廊下やバルコニー部分にプレキャストコンクリートが使用されるようになったものと考えられます。
しかし、プレキャストコンクリートは万能かというと、完璧ではなく、プレキャストコンクリート特有の問題が発生する場合もあります。プレキャストコンクリート部材の品質は間違いなく良質なのですが、工場で製作した部材を現地まで運搬する必要がありますので、現場で部材どうしをつなぐことになります。問題はその接合部で、接合部から漏水が発生したり、接合部にクラックが発生することがあります。建物としての安全性に問題はないのですが、漏水やクラックの発生は視覚的に気になり、塗装部分が最も顕著に影響を受けます。
プレキャストコンクリートを使用した建物の場合は、大規模修繕工事の実施時期にも関係があり、外壁タイルの不具合が少なければ、大規模修繕工事も慌てて実施する必要がありません。
ここまでは狭い意味でのプレキャストコンクリートの説明をしましたが、広い範囲でのプレキャストコンクリートを考えると、以前より、全体の構造体をプレキャストコンクリートで構成する建物も建設されています。
このケースでは、外壁や屋上防水の傷み方のメカニズムが現場打ちの建物とは違いますので、修繕方法も変える必要があります。
いずれにしても、建物を良く理解している専門家に診断してもらうことが大切です。