構造スリットの悪戯

一般の方にとっては、少々理解するのが難しい問題なのですが、鉄筋コンクリート構造(鉄骨鉄筋コンクリート構造も同じ)の設計の際に、構造設計者は、壁の一部に構造スリットという「切れ目」を設けます。

その目的は、建物全体の強度のバランスを保つためなのですが、言い換えれば、建物の一部に強度的に偏って強い部分があると、地震などの外力が加えられた際に弱い部分が破壊されることが懸念されます。そのため、壁が水平力に対して効果を発揮しすぎる部分に対して、構造スリットという切れ目を入れて全体のバランスがとれるようにするのですが、ここで一つ問題が発生してきます。

構造スリットは構造計算のバランスを取るために採用する手法ですが、最近の構造スリットは完全スリットがほとんどで、構造スリットの両脇の躯体が不連続になっています。そのため、構造スリットからの漏水や構造スリット近辺のコンクリート躯体の不具合(クラック等)が発生している事例が見られます。構造スリットの存在は、構造図面を確認しないとわからないケースが多く、一般の人では確認することが難しく、又、建築関係の人て゜も、正しく理解している人が少ないように思われます。

原因のわからない外壁のクラックや漏水が発生する場合には、構造スリットが原因になっていることもありますので、建物の設計をよく理解しているコンサルタントに相談することが必要です。建物の販売側は、原因を把握した場合でも、問題が大きくなることを恐れ、他の原因にすりかえるケースも多いので、注意が必要です。

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