マンションの耐震性

昨年の構造計算書偽装問題の発覚以後、一般の人々の中には、自分達のマンションの耐震性は大丈夫だろうかという不安感を持つ人が増えました。我々専門家は次のように考えます。確かに、土建業界はいい加減な世界という表現もあながち間違っているとも言えませんが、多くの人達は真面目に働いています。どんな世界にも、一部には悪質な人達がいることも事実です。今回の事件では、安心できる数値が1に対して、0.3とか0.2といったものがあるという事実が世間に衝撃を与えました。しかし、この数値は一般の人が受け取る印象とは別のものと考える必要があると思います。

1981年の建築基準法の大幅改正以前の建物は、現在の計算基準で比較すれば、当然不適格となってしまいます。しかし、建物の安全性は数値のみによって表現されるものではありません。数値は、あくまでも一つの指標であり、建築基準法ができる前(戦前)の古い建物で、現在まだ残っているものも少なくありません。京都や奈良のお寺もしかりです。

数値も大事ではありますが、地震や台風など、地球の自然環境に耐えて、行き残ってきたものは基本的に自然の驚異に対して共存できる資質を備えていると思います。簡単に言えば、地球規模に対してバランスのとれたものは共存できると考えます。古い話で言えば、バベルの塔のように、神に逆らい、天へ天へと向かっていったものは、いずれ崩壊することになります。もちろん、目覚しい技術の進歩もありますから、それなりの備えをすれば共存可能となり得ますが、自然を甘くみると災いに直面することになります。

それでは、バランスの良い建物とはどういったものでしょうか。基本的にコンクリートのマンションは壁量が比較的多いため、耐震的には有利な建物と思います。お隣との間には普通はコンクリートの壁があるため、南向きのマンションであれば、南北方向には強いことになります。又、構造計算の基準では、20mを越す建物については、少しづつ条件が厳しくなるため、20m以下で安定した形状の建物は比較的強いともいえます。階数でいえば、5階建て以下の建物のイメージです。

20mを超える建物でも、安定した形状の建物や、柱と柱の間の距離が大きくない建物、鉄骨が入っている鉄骨鉄筋コンクリートの建物などは、同様に安心感があります。又、構造本体が柱・梁による骨組みの構造でなく、壁式構造の建物は一般的に耐震性能が高いといえます。
では、注意すべき建物とはどんなものかといえば、1階がピロティになっていて、1階の壁が少ない建物や、平面の形状が対称に近くなく、偏心している建物。さらにペンシルビルのような細長い建物などは耐震的に不利といえます。

新しい設計基準であっても、設計の考え方は全く壊れない建物をイメージしているのではなく、大きな地震によって、何らかのダメージを受けても、倒壊しない、避難ができるという大前提で考えていますので、多少のひび割れが発生することは想定内のことといえます。

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