コンクリートの中性化

最近、コンクリートの中性化が問題となり・・・・という話を耳にしたことがあると思いますが、コンクリートの中性化の問題とは何かについてお話します。

コンクリートはセメント・砂・砂利に水を加えて固まらせたもので、実際の建物では、このコンクリートの中に鉄筋を入れて頑丈な建物として使われています。

これを鉄筋コンクリートといいますが、人間の体に例えると、コンクリートは骨に当り鉄筋は筋肉の役割を果たしていることになります。骨と筋肉と両方が健全であってはじめて健康な肉体ということができます。

コンクリートはアルカリ性であるために鉄筋が錆びることを防止する役目も果たしています。
ところが、その大切な役割を担っているコンクリートの質が最近低下しているという議論が出てきました。

理由としてあげられるのが、塩分を含んだ海砂を使うからだと一般では言われておりますが、問題は海砂の問題だけでなく、様々な経済事情が反映されています。

戦後経済の高度成長の影響もあり、マンションが大量に作られるようになりますと、それまでのゆっくりしたペースで建設していたのでは間に合わなくなり、コンクリートをポンプ車で圧送して短時間で打設するようになりました。

しかし、その結果として、水が多めのゆるいコンクリートが使われるようになり、そのこともコンクリートの中性化の問題に大きく影響しています。

マスコミでも騒がれるように、コンクリートの中性化の問題は小さな問題ではないのですが、注意したい点は、改修工事を受注したいともくろんでいる工事会社やコンサルタント会社が行う建物の劣化診断の中には、必ずといっていいほど、コンクリートの中性化試験項目が入れられています。

試験をすることは悪いことではないのですが、こういった試験をすることによって、建物の大規模修繕を急がなければといけない!という気持にさせるためにやっているようにも受けとれます。

あるいは、調査内容を専門的でもっともらしいものにみせることによって、調査費用を沢山いただくためといった思惑が感じ取れます。

少なくとも竣工後10年程度の建物に対しては、コンクリートの中性化試験がどれほどの意味があるのかをよく考えてみる必要があります。

コンクリートの中性化が進み、竣工後20年~30年で取り壊しをしたという例は日本では聞いたことがありません。仮に中性化の進行が早いとしても、一度打ったコンクリートは交換がきかないのです。つまり建物全体を壊さないと直せないのです。

真の意味で検査が必要になるのは、コンクリートの寿命の最短の時期と考えられている、50年目から60年目程度の時期以降であって、その頃に検討のために調べるのなら理解できます。
世の中一般で行われている中性化試験の狙いが、建物の大規模修繕工事の決断を迫るために使われている傾向があることも頭に入れておく必要があります。

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