マンションの大規模修繕工事を計画する際に一般の方が重要視する項目の一つが「工事監理」です。
ところで、工事監理はどのような業務をいうのでしょうか。普通の言い方で解説すれば、設計仕様通りに工事が実施されているかどうかを確認し、必要に応じて是正指示をして当初計画の通りに工事が実施されることを監視するということになります。
たまに、「工事契約をする予定だが、工事監理だけお願いできますか?」という相談を受けることがありますが、私の答えは以下のようになります。
「もちろん工事監理業務だけでもお受けできますが、より大事な事は計画内容が適正かどうかであって、どんなに緩い契約内容であっても、法治国家である以上は契約内容を否定することはできませんので、元々の工事内容が緩ければ、いくら工事監理を厳しくやっても、大した意味はありません。」
つまり、最も大切なことは工事内容を決定する際に、如何に無駄な工事を排除し、如何に優良な施工業者を選択できるかによって、工事の良否が決まってしまうのです。幸い日本にはレベルの高い優良な施工会社が沢山存在しますので、適切な工事内容を決定し、優良な施工業者と契約すれば、現場は任せきりにしても、ほぼ問題なく完成する可能性が高いのです。
そうは言っても、やはりポイントはあって、外壁の不具合状況の判断については専門家の判断を必要とします。なぜ専門家の判断が必要かといえば、発注者である管理組合と受注者である施工会社では立場が異なり、責任の立場も違えば、費用発生の立場も違うため、越えられない立場の違いがあり、その判断の為には管理組合の立場で発想するコンサルタントが必要となるわけです。
極論すれば、その劣化判断と処置方法の決定の際にコンサルタントが重要な役割を果たせば、後は管理組合だけでも判断できる工事内容がほとんどです。
また、監理する立場から解説すると、常駐監理をしない限り、厳密には適正な監理は無理なのです。理由は簡単です。
①理由その1:大規模修繕工事は期間が短く、短期間に多くの職人が作業するため常時現場にいないと各作業工程の確認ができない。
②理由その2:コンサルタントが常駐監理をすると工事金額に対する監理費用のバランスが悪い。
つまり、1週間に2日~3日見に来ても、中途半端で、たいした意味がないのです。よって、頻繁に現場を見てもらえば安心という考え方は間違いであると敢えて言います。
では、どの程度見てもらえばいいかと言えば、以下のようになると思います。
①工事開始前の3社立会確認(組合・施工会社・コンサルタント)
②外壁の劣化調査が完了した時点での確認
③外壁塗装色・新規タイル色の確認
④外壁不具合箇所の撤去状況の確認(下地状況の確認)
⑤外壁補修後の確認
⑥仮説足場撤去前の確認
⑦完成検査
最低限でも上記内容程度の確認は必要ですが、これ以外に工事内容によっては現場確認が必要になりますが、平均すれば、月に2日程度の監理でも十分に効果があると言えますので、頻繁の現場確認よりも、むしろ管理組合と施工会社で開催する定例会議を頻繁に実施し、住民からの苦情や追加工事等の調整に時間を割くべきです。
コンサルタント費用のかなりの部分が、ただ見回りにきているだけの費用であるとするなら、それはコンサルタント費用面での無駄ということになります。
別な言い方をすれば、熟練の域に達していない経験不足のコンサルタントは頻繁に現場に足を運ばないと押えどころがわからないかもしれませんが、プロ中のプロであるコンサルタントなら、月に2日の監理でも、かなり高度な監理ができるという事を覚えておいてください。