瑕疵におけるコンサルタントの役割

大きな期待を持って購入したマンションが建物の不具合が原因で発生するトラブルに巻き込まれることが稀にあります。小さなトラブルはどこにでもある話で珍しくはありませんが、外壁タイルの剥離落下事故や止まらない漏水等、建設時の施工不良あるいは設計不良による不具合が生じる事があります。

マンションを購入した消費者側には基本的に責任はありませんので、皆さんは販売者・施工者に瑕疵としてクレームをつけることになりますが、よくある話として、「不具合の原因は経年劣化によるもので、瑕疵ではないので販売者に責任はない」といった回答があることが多いのです。竣工から間もない頃は、それなりに対応してもらえることが多いのですが、不動産販売の立場で考えている保証期間の2年が過ぎると、この先は有償となりますと言われる事も多く、消費者の中には販売者側の不誠実さに腹をたて、「この不具合は瑕疵だから、無償で直しなさい!」と強く迫る人も少なくありません。

問題は、この辺りから始まります。ポイントを整理すると

①その不具合が本当に瑕疵に相当する不具合なのかどうか。
②販売者は基本的に瑕疵を認めない。

上記①②を解説しますと、①については専門家の助けが必要となります。建設工事で明白に瑕疵と判断されるのは「構造躯体の不具合」 「漏水」の2点です。

「構造躯体の不具合」はほとんどありませんので一般的な瑕疵からは外してください。そうすると残されたのが「漏水」ですが、漏水原因は特定しにくいという難しさがあるので、専門家の判断が必要となります。

しかしここで問題となるのが外壁タイルの不具合です。外壁タイルは構造躯体ではなく、仕上げ材なので、瑕疵として明白に書かれている内容から外れてしまうのです。ところが外壁タイルが剥離落下する事故は結構な頻度で見られます。慌てた消費者が販売者側にクレームをつけると、経年劣化だとか大きな地震のせいだとか言って逃げ回ることがほとんどです。しかし外壁タイルが剥離落下する場合はほとんどが施工不良が原因なのですが、その原因を特定しにくいという難しさがあるので、販売者・施工会社は経年劣化が原因であると言ってクレームに応じないことが多く見られます。もちろん、良く出来ている建物でも外壁タイルの浮きや割れ等の不具合は必ずありますが専門家から見て、これは瑕疵に当ると思われる不具合も結構あります。
さてここで瑕疵判断の最大のポイントを説明しますと、我々専門家からみて瑕疵に当ると思われる事例で、販売者側も内心では薄々「まずいな」と感じている不具合でも販売者は絶対と言っていいほど、「瑕疵を認める」ことはないのです。無償での修繕工事に応じてもらえる事例は稀にありますが、大体の場合はノラリクラリと逃げ回るか、「どうぞ裁判でも起こしてください」と開き直るかのどちらかです。

しかし悲しいかな、現在の日本での民事裁判は絶望的に消費者に不利に出来ています。いくつかの裁判案件に関係してきましたが、裁判官が基本的に白黒をハッキリさせたくない傾向が明白で、瑕疵の立証責任がある消費者側には圧倒的に不利な状況なのです。
要するに、消費者と販売者との話し合いの中で妥協点を模索して最善の策を見付ける事が重要なポイントとなるのですが、何一つとして非のない消費者側は「スジ論」で考えれば、どうしても強硬な意見になりがちです。消費者側の心情を考えれば、よく理解できるのですが、最初に書きましたように、販売者側は原則的に自社の瑕疵を認めることは考えられません。会社には会社の企業論理があって、その理屈を守れない担当者は会社を辞めることになるのです。つまるところ平行線です。

★ 消費者が主張する「スジ論」はだいたい正しい!
★★でも販売者の企業論理では瑕疵は認められない!

では、どうする!?

交渉相手にもよりますが、中には可能な範囲で対応してくれる企業もありますので、粘り強い交渉が必要となります。一方的に相手を攻撃し続けるだけでは解決の糸口は見いだせないと考えるべきでしょう。現在関わっている案件では販売者側が1000万円相当の修繕工事を賄ってくれる話がまとまっていますが、最終的な合意に至るまでに消費者側の「スジ論」と販売者側の「企業論理」とのせめぎ合いが発生し、決裂寸前になった場面もありましたが、双方の事情がわかっているコンサルタントがテコ入れすることにより、決裂の憂き目を見ずにすみました。

コンサルタントは、交渉相手の態度次第では強く攻め込み、消費者側と販売者側が煮詰まりそうになった際には消費者側にも熟慮を求めるといった役割が求められるのだと思います。
目指すところは最善の改善策なのです。

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