大規模修繕工事の「コロンブスの卵」

大規模修繕工事の費用は出来る事なら、少なく済ませたいというのが万人の願いです。しかし、安かろう悪かろうでは困るし。。。と消費者は考えますが、それは正しい考え方です。一方、大規模修繕工事を業としている人達は自社売り上げを伸ばすために、より沢山お金を使っていただこうと考える訳ですが、これも自由社会では当然の考えです。問題は双方の利害が一致しないところにあります。でも双方で真剣に詰めていけば、双方で納得できる境目が見えてくるのです。

ここが最大の肝なのですが、立場の異なる2者が相互の立場を尊重した上で真剣に協議していけば、必ず合意点が見つかるのですが、素人集団と専門集団との間で真の信頼関係を保ちつつ合意点を見つけることが意外と難しいのです。どうしても専門家集団の論理に押されがちになります。それは大規模修繕工事を業とする人達のリスク回避と利益確保の問題があるので、なかなか互角の協議が出来ません。企業の利益確保の比率は、それなりに想定できますが、企業の将来リスクに対する考え方はまちまちで、中には出来る限りの工事をしておけば、竣工後に組合から言われた場合でも、実際に仕事をした下請けに責任を振り向けられるので、出来るだけの工事を勧めようと発想する企業が少なくありません。こういった企業の将来リスクを見据えた工事拡大は消費者が望んでいる事とは温度差があります。

我々のようなコンサルタントは双方の立場がわかるので、公正な立場で物事を解説できるのですが、中には工事業者の発想に近いコンサルタントも結構いるのも現実です。しかし、コンサルタントは基本的に管理組合から業務委託される訳ですから、当然管理組合の立場で発想しなければなりません。

さて本題ですが、何が「コロンブスの卵」なのかと言うと、消費者の立場で大規模修繕工事の費用を削減するにはどうしたらいいのか!? 答えは簡単です。無駄な工事をやらない事。あるいは緊急性の低い工事は控える事。この二つの立場で工事内容を見直してみると、大体20~30%程度の費用が削減できます。何が無駄で何が緊急性がないかについては専門家と協議して判断する必要がありますが、一般的に言えば防水更新工事等が良い例です。何も勉強していない状態で工事業者あるいは管理会社の提案を受けると、考えなしに屋上防水工事を更新させられてしまう組合のなんと多い事か!呆れるほど多いのです。元々の設計及び施工内容が悪いケースもありますが、半数以上は慌てて更新する必要はありません。場合によれば、20~30年程度、雨漏りしない確立が高いのです。専門的に言えば、漏水する箇所は決まっています。

外壁タイルの補修等も必要以上に補修する業者もいます。(自社のリスク回避の為)

また、当方で最近よくコンサルティングをしている事業用マンションでは、普通に行う大規模修繕工事のほぼ半額の工事費で終るケースが増えています。理由は単純明快です。道路に面さない外壁については仮設足場もかけずに点検だけで済ませ、全面点検後に特に悪い箇所がある場合のみ対処する方法を採用しているため、必要な工事費は一般のほぼ半額で綺麗に再生されています。ファミリータイプのマンションでは、そうもいかない事情もありますが、家賃収入の確保が目的で建設されたマンションでは大規模修繕工事に湯水のごとく費用を掛けることは本来の目的に反します。

前述の記述内容は一般的とは言えないかもしれませんが、そもそも大規模修繕工事はお化粧直しの工事がメインで建物の「エステ」のような工事ですから、管理組合の財政状況に合わせて考えるべき工事なのです。

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