構造スリットに関わる外壁タイル浮きの処理

外壁タイルの不具合発生原因の一つとして構造スリット絡みの不具合が増えてきました。構造スリットと聞かされても、一般の方には理解しにくい技術上の問題なのですが、無視できない状況にあると思いますので、少し解説したいと思います。

構造スリットは建築基準法の新耐震基準が制定された時点以降の比較的新しい建物に採用されておりますが、平たく言えば、柱・梁等の主要構造フレームと壁躯体との間に隙間を作り、地震等の水平力が加わった際に柱・梁の主要構造フレームを拘束せずに、構造フレームにしなやかさを持たせる目的で使われます。構造上の解決策としてはバランスの良い建物にすることが出来るのですが、外壁仕上げの点では少し問題があります。

構造スリットは巾3㎝程度の隙間を確保しますので、外壁仕上げのタイル貼りの点から考えると、その隙間部分はタイルの接着が出来ない事になります。また、構造スリット部では柱・梁と壁とが異なる動きをするので、構造スリットにまたがって貼られたタイルは堪らず浮きが発生したり、クラックが発生したりします。構造設計者によっては、水平方向の構造スリットを採用する人もおりますので、構造スリット周辺の外壁タイルが広範囲に浮く事例もあります。

沢山の現場経験のある現場監督であれば、現状を熟知している可能性が高いのですが、構造及び施工に関する知識の乏しい技術者の中には構造スリットの実情を把握していない人もいるかと思われます。

構造スリットを採用している以上は外壁タイルの浮きやクラックは避けられない現象と考えねばなりませんが、問題はその不具合の処理方法と思います。一般的に考えれば、タイルの浮きやクラックは補修して直すのが当然なのですが、経年劣化による不具合と違い、構造スリット周辺の不具合は定常的に発生する可能性が大きいので、よく考える必須があるのです。

最近実施した大規模修繕工事でも構造スリット廻りの不具合が結構多く、当初考えた不具合数量よりも不具合数が増えたのですが、管理組合の皆様に構造スリットの内容と今後発生する不具合の可能性も含めて説明し、ご理解を得た上で、構造スリット廻りの不具合で剥離落下の可能性が低いものは張替をしないという選択肢を採用していただいたため、数量の増加はほぼゼロとなりました。

なぜ、そのような方法をお勧めしたかというと、元々、構造スリット廻りは柱・梁と壁とが違う動きをするように設計されている訳ですから、その考え方を変えない限りはこの先も柱・梁と壁とは違う動きをします。せっかく貼りなおしても、すぐに同じ不具合が発生する確率が高いため、目で見て気にならない不具合は敢えて張り替えないという考え方を管理組合に説明し、了解していただきました。管理組合は賢明な判断をされたと思っています。

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