外壁タイル浮きの原因検証

昨年から今年にかけ実施している大規模修繕工事の外壁タイル劣化状況で少し心配な現象が続いたため、その原因について色々検討してきたが、漠然とではあるが一つの答が見えてきた。

まず問題の症状は何かというと、以下の通りとなる。

①外壁タイルの浮き症状が広範囲にわたって生じているマンションが結構あること。
②タイル浮き症状がコンクリート躯体面からであること。

ここ1~2年でのことなので、東日本大震災の影響が大きいのかもしれないとも考えたが、震災後に工事をしたマンションでも、外壁タイル浮き症状が従来と変わらないものも多いので、一概に大震災の影響と言い切れないと考えている。強いていえば、元々良くない状況のマンションではその劣化がより進行した結果と思われる。

昨年経験した酷いケースはコンクリート躯体に外壁タイルを直接貼っているケースであったが、今年経験したケースではコンクリート躯体の上にモルタルを塗っているケースで広範囲の浮きが確認された。ここで言うモルタルとは昔風のモルタルではなく、モルタルそのものを軽量化するために開発された「ティエスサンド」というモルタルで、重い骨材の代わりに発砲ポリスチレンを粉砕したものを使用している。主に下地調整用に使われるが、このティエスサンドをタイル下地として使用している建物の工事で広範囲のタイル浮きが続いたのである。

ティエスサンドを使っている現場で広範囲のタイル浮きが生じたので、これはてっきりティエスサンドが犯人かと思ったら、別の現場ではティエスサンドを使用した建物であるのにタイル浮きの減少は非常に少なかった現場が出てきたのである。

以上の経験を総合して考えると、詰まるところは建設当初のコンクリート面の下地処理が適切であったか否かが問題になるのだろうと推測される。
ここで、もう一つ説明を加えておくと、コンクリート躯体の表面は昔と今では状況がかなり違っている。

大昔はコンクリートの型枠といえば、木材で型枠パネルを作ってコンクリートを打設していたが、型枠パネルがコンパネ(合板型枠)に変わり、その後は現在多用されているパネコートが主流となった。

このパネコートは型枠面が塗装されているため、離形しやすく、コンクリート面もツルツルに上がるが、問題はこのツルツルのコンクリート表面にある。建築学会の仕様書では、コンクリート面に直接タイルを貼る場合はコンクリート表面を適切に目荒らしするように書かれているが、そういった下地処理が適切に実施されているか否かが問題なのだと考えられる。話をパネコートに戻せば、パネコートの説明書きには以下のように書かれている。

「多転用の場合は塗装合板であっても初回から油性剥離剤を塗布し使用してください。」
つまり、コストを下げるためコンクリート型枠の転用回数を増やすためには、型枠の塗装面に油性剥離剤を塗ってくださいという事になる。

結論として考えられるポイントは次のようになる。

①コンクリート型枠としてパネコートを使用しているケースで外壁タイルの広範囲の浮きがみられる。
②型枠撤去後にコンクリート表面が適切に下地処理されているか否かがポイント。

これらのポイントが分かれ目となって、外壁タイル浮きの症状が発生したり、しなかったりすると考えられるが、次のような要因が影響するからだ。

●一般的に建設コストは発注者により低く抑えられる。
●一般的に工期は短く突貫工事に陥りやすい。
●上記理由から、コンクリートの下地処理が軽視される状況になりやすい。

こういった建設途中のプロセスは曖昧になりやすい傾向にある。発注者側は発注コストを絞りに絞る方向に向かうので、多少のことは目をつぶることもありうる。仕上がってしまうと見えなくなってしまう部分は特にそうだ。売ったもん勝ちの世界だ。もちろん、そんな酷い企業ばかりではないと思うけれど、企業の社会に対する姿勢が大きく影響するのかもしれない。利益追求に偏った企業が売り出すマンションは要注意だ。

無料のご相談やお問い合わせなどは、以下のフォームよりいつでもお気軽にどうぞ。