20年目でも問題なかった大規模修繕

竣工後10年目から現在まで10年近く建物のコンサルタント契約をしているマンションがあります。

117戸、4棟、3階建て、鉄筋コンクリート壁式構造のマンションですが、竣工後10年目に管理会社から2億円近くかけて大規模修繕工事を実施する必要があると言われ、一時金徴収の提案があったため管理組合がコンサルタントを探すことになりました。

数社のコンサルタントの中から当社が選ばれたわけですが、私の所見は「建物の出来具合が良い上に、高さも低く、周囲の環境も良好のため、急いで修繕工事をする必要なし」という回答でした。そういった分析と考え方を理解していただき、その時点から10年間コンサルタントを任されています。

この10年間に当社が指摘して実施した工事は
①屋根の改善工事
②共用階段の塗装を中心とした改善工事
③鉄部塗装の更新工事
がメインの大きな工事で使った修繕積立金は約8千万円弱。

今年が丁度20期目になりましたが、この春やっと本格的な大規模修繕工事を実施しています。

しかし、その費用も7千万円弱。これまで実施してきた修繕工事と合算しても1億5千万円弱です。

この金額は10年前に管理会社が提示した2億円の工事金額よりも少ないのです。

そして、驚いたことに工事が始まり外壁タイルの劣化調査をしてみると、当社が普段コンサルをしている他のマンションの劣化状況よりもはるかに良い状態でした。

これは何を意味しているかと言えば、日頃私が主張している内容
「建物の劣化状況は年数によって決まるものではなく、竣工時点で良し悪しが決まっている」
ということです。

つまり、設計と施工がシッカリしていれば、建物は長期間にわたり良い状態を保つ可能性が高いということです。今回、本格的な仮設足場を組んで大規模修繕工事を実施した大きな理由は数年前からバルコニー軒裏端部にコンクリートの爆裂現象が目立つようになったためです。

私の経験では、コンクリートの塗装箇所は竣工後15年目頃からコンクリートの爆裂現象が目立つようになります。逆に言えば、大規模修繕工事の実施を早めると、この爆裂現象が出る前に劣化調査を実施することになり、タイミングとしては好ましくないとも言えます。

何事も早ければ良いというものではないことが立証されたことになると考えています。

劣化した箇所を修繕することが本来の目的とすれば、劣化部の修繕時期も慎重に検討した方が良いという結論になります。

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